経営指針物語 6

"第6話 原点にもどる"

横木 正幸

 

 現実の世界だけを見ていたのでは、数字に裏づけをつけるは無理だと気づくまでに,また相当の時間を要した。
 振り返ってみれば、創業の頃は、何もないのに
頑張るぞ!と、不思議なくらいに希望に満ちていたのではなかったろうか。それが5年、10年、15年、20年…と過ぎるのに従って、目標は対前年比との比較になり、夢を見るのはおろか、仕事そのものがノルマにになって重くのしかかってきたのではないだろうか。本来、仕事というものは楽しいものであるはずなのに、そうでない世界を創りあげていた自分がいた。
 そうだ!過去がプレゼントしてくれたものは「現状」なんだ。将来の保証をしてくれるものではない。構造的変化にさらされている現状では「過去延長」の思考では通用しないのだ。
 いま必要なのは、「夢を見ること」なのだ。ずいぶん昔に忘れてしまっていた「夢を見ること」が要求されているのだ。その夢を実現するために「ああすればよくなる」「こうすればこうなる」「そうすればそうなる」という前提条件を設定することなのだ。創業時の、または継承時の原点にもどってみることが一番近道だとわかった。
 考えてみればお粗末である。いまいる世界は夜の古町みたいなものである。周りはみんな社長と先生ばかり。毎日「社長社長」といわれてその気になっている。過去の時代の流れが良かっただけなのに、俺は社長だ・幹部だと舞い上がっていた自分がそこにいた。
 振り返ってみたら、誰も後ろにはいない。裸の王様になっていたのではないだろうか。
 しかし,「何でいまさら夢なんだ?子供でもないのに…」そうなんだ!子供の寝てみる夢ではないのだ。大人の夢を見ることなのだ。では,大人の夢とは何だ?そうか、大人の夢を見るために今までの勉強があったのか。今まで勉強してきた「三つの第一」を実践することなんだと、だんだん筋が通ってくる。 では、第一が三つもあるが、どうすればいいのだ。社会性・人間性・科学性、どれをとっても大変なものばかりだ。三つ同時に進めることなんて、とても出来るものではない。でも、この三角形の中に宝の山=利益があるという。宝の山は手に入れたいが、方法が見つからない。
 説明があった。「子供が三人いるどういう愛情のかけかたをするか?それと同じだ。子供に順序をつけるわけにはいかない。みんな第一だ」と。???
 それはそうだが、無理やり順序をつけることは出来ないか?考えつづけて出した結論は、まず最初に、経営者・幹部は社員第一主義に徹すること。社員は、商品・技術第一主義に徹すること。そうすれば、お客様が「あの会社は、お客様第一主義だ」と言ってくれるのではないか。というものであった。

前へ     次へ






コーエイ印刷ホームページトップへ